一冊の小説に魅せられて。 -Budapest-
小説に魅せられ、影響を受け、何かをしてみたくなった、何処かに行ってみたくなった、そんな記憶はありませんか?
私は、中学生の頃に、一冊の小説と出会い、中東欧に興味を持ちました。
宮本輝「ドナウの旅人」
ドナウに沿って旅をする。そんな手紙を送ってきた母・絹子を追って、娘・麻紗子が、かつてのドイツ人の恋人シギィと旅をする。麻紗子は、絹子が17歳も歳の離れた男性と旅をしていることに驚愕し、連れ戻そうとしますが、絹子の決意はかたく、旅は続いていく。
読んだ当時の鮮明な記憶はありませんが、複雑な人の感情と中東欧の素朴な情景が交じり合って、しっとりとした印象を受け、いつか訪れてみたいと、漠然とした感情を持ったのを今でも覚えています。
もちろん、週末を利用しての訪問ですので、ドナウに沿って旅する、なんてことはできませんが。
2007年1月27日午前3時。最近冷え込みの厳しいLondonから、今回も早朝の出発。London-Lutonの空港からは2時間半ほどでBudapestの空港につきます。搭乗直後はInsolvency in Private International Lawなんてものを読み始めますが、 あえなく眠りに落ちます。
激しい揺れに驚いて目を覚ますと、窓の外は真っ白。雲の中?それにしても揺れが激しいな。。。段々意識がはっきりしてきて、よく見るとそこは雪化粧をしたBudapestの空港でした。
空港からは、定額制のエアポートタクシーが安心とガイドブックに書いてありましたので、これを利用したのですが、これが曲者。
内心、細かいのを持っておけばよかったかなと思いながら、10000フリントを出すと、5000フリントを返して、
「thank you!」というドライバー。
「いやいや、3600フリントだと聞いてるぞ。」と私。
渋々、さらに500フリントを返してくるドライバー。これでいいだろうと言わんばかり。おいおい、25%もチップを取るつもりですか?大体チップを勝手に計算するな!さらに粘って500フリントをバックしてもらい、その額ならチップとしても相当、元々某ガイドブックには5800フリントと書いてあったので、そんなものかと納得。
それにしても、イタリアでもそうでしたが、やはり、観光客と見れば騙そうとしてくる人もいれば、お金をせびってくる人もいます。たいした金額でなくても、どうして訪れる人の、その国に対する印象を悪くするようなことを取り締まっていかないのでしょうね。タクシーなど、おそらくは免許業種でしょうに。
さて、「この国も油断ならんなぁ。」と身が引き締まったところで、チェックインを済ませ、今日はBuda地区を回ります。その街を味わう、感じるために、やはり徒歩でぶらぶら行きます。
王宮の丘を右手に、
くさり橋を左手に見ながら
この雪景色の中をドナウに沿って歩いていきます。
自由橋までたどり着いて、腹ごしらえをしようと考えます。自由橋からの眺め。ドナウの東側がPest地区。西側がBuda地区。
この橋を渡り、Pest側のヴァーツィ通りという繁華街のレストランでハンガリー料理を頂いてみます。ハンガリーの料理は、様々な種類のパプリカを用いることで有名です。
というわけで、まず、グヤーシュというパプリカを用いて煮込んだスープ。見た目とは違い意外にもさっぱりとしていました。
そして、パプリカーシュ・チルケ。やはりパプリカを使用したチキンの煮込み料理。
クレープにリンゴと蜂蜜のシロップをかけたようなデザート。日本人の感覚に合う、甘さ控えめのさっぱりしたものでした。
お腹も満足したところで、自由橋を引き返してBuda地区に戻ります。
自由橋から眺めるゲッレールトの丘。高いところといえば、登ってみたくなるのが心情。子供と何とかは高いところが好き…。
林道であり、雪で足元も悪いですが、休日の日中なので、この季節でも観光客がまばらながらいらっしゃって、危険な感じはしませんでした。夜に行こうという気にはなりませんでしたが。
さて、丘の上からの眺め。曇天なのが残念ですが、時が止まっているかのように雄大に流れるドナウ、王宮、国会議事堂など街を彩る建造物を一望できる素敵な場所でした。
タバコをふかしてのんびり景色を楽しみ、次に向かうのは、王宮の丘。
王宮の丘から眺めるくさり橋。
王宮。現在は美術館、博物館として使用されています。
「麻沙子は、(中略)城壁に挟まれた階段を昇っていった。(中略)城壁に囲まれたブダ城のドームの、くすんだ緑色が、かつて王宮であったことをしのばせていたが、その下につづく古い建物は城というよりも、博物館とか美術館とかを連想させた。」宮本輝「ドナウの旅人」より抜粋。
王宮の前から眺めるドナウ、そしてPest地区。
漁夫の砦。真ん中に立つ巨像はハンガリー建国の父である聖イシュトヴァーンの像です。
漁夫の砦からの眺めもまた同様に素晴らしいです。少しずつながら、角度を違えて見るブダペストの街並みはどこを切り出しても美しいと感じました。
教会などを見学して、
王宮地下迷宮なる場所に踏み込んでみます。この内部は洞窟のようになっており、いまだに全貌は明らかになっていないそうです。
迷宮を出ると、日も暮れ、「ドナウの真珠」とも讃えられるBudapestの夜景を眺めることができました。
日も暮れて、人気が少なくなりつつありましたので、ケーブルカーで丘を下ります。
Budapest初日の私の印象の代わりに、小説の一節をご紹介させて頂きたいと思います。
「ブダペストはおもしろい街だな。新しいものや古いもの、虚無や希望、哀しみや歓びが、これくらいひとつの絵として人々に見せている街はないよ。どんな国にも興亡の歴史がある。栄光と苦難との、ふたつの傷を消さずに持っているってことが、ブダペストにいると判ってくる。」 宮本輝「ドナウの旅人」より抜粋
私は、中学生の頃に、一冊の小説と出会い、中東欧に興味を持ちました。
宮本輝「ドナウの旅人」
ドナウに沿って旅をする。そんな手紙を送ってきた母・絹子を追って、娘・麻紗子が、かつてのドイツ人の恋人シギィと旅をする。麻紗子は、絹子が17歳も歳の離れた男性と旅をしていることに驚愕し、連れ戻そうとしますが、絹子の決意はかたく、旅は続いていく。
読んだ当時の鮮明な記憶はありませんが、複雑な人の感情と中東欧の素朴な情景が交じり合って、しっとりとした印象を受け、いつか訪れてみたいと、漠然とした感情を持ったのを今でも覚えています。
もちろん、週末を利用しての訪問ですので、ドナウに沿って旅する、なんてことはできませんが。
2007年1月27日午前3時。最近冷え込みの厳しいLondonから、今回も早朝の出発。London-Lutonの空港からは2時間半ほどでBudapestの空港につきます。搭乗直後はInsolvency in Private International Lawなんてものを読み始めますが、 あえなく眠りに落ちます。
激しい揺れに驚いて目を覚ますと、窓の外は真っ白。雲の中?それにしても揺れが激しいな。。。段々意識がはっきりしてきて、よく見るとそこは雪化粧をしたBudapestの空港でした。
空港からは、定額制のエアポートタクシーが安心とガイドブックに書いてありましたので、これを利用したのですが、これが曲者。
内心、細かいのを持っておけばよかったかなと思いながら、10000フリントを出すと、5000フリントを返して、
「thank you!」というドライバー。
「いやいや、3600フリントだと聞いてるぞ。」と私。
渋々、さらに500フリントを返してくるドライバー。これでいいだろうと言わんばかり。おいおい、25%もチップを取るつもりですか?大体チップを勝手に計算するな!さらに粘って500フリントをバックしてもらい、その額ならチップとしても相当、元々某ガイドブックには5800フリントと書いてあったので、そんなものかと納得。
それにしても、イタリアでもそうでしたが、やはり、観光客と見れば騙そうとしてくる人もいれば、お金をせびってくる人もいます。たいした金額でなくても、どうして訪れる人の、その国に対する印象を悪くするようなことを取り締まっていかないのでしょうね。タクシーなど、おそらくは免許業種でしょうに。
さて、「この国も油断ならんなぁ。」と身が引き締まったところで、チェックインを済ませ、今日はBuda地区を回ります。その街を味わう、感じるために、やはり徒歩でぶらぶら行きます。
王宮の丘を右手に、
くさり橋を左手に見ながら
この雪景色の中をドナウに沿って歩いていきます。
自由橋までたどり着いて、腹ごしらえをしようと考えます。自由橋からの眺め。ドナウの東側がPest地区。西側がBuda地区。
この橋を渡り、Pest側のヴァーツィ通りという繁華街のレストランでハンガリー料理を頂いてみます。ハンガリーの料理は、様々な種類のパプリカを用いることで有名です。
というわけで、まず、グヤーシュというパプリカを用いて煮込んだスープ。見た目とは違い意外にもさっぱりとしていました。
そして、パプリカーシュ・チルケ。やはりパプリカを使用したチキンの煮込み料理。
クレープにリンゴと蜂蜜のシロップをかけたようなデザート。日本人の感覚に合う、甘さ控えめのさっぱりしたものでした。
お腹も満足したところで、自由橋を引き返してBuda地区に戻ります。
自由橋から眺めるゲッレールトの丘。高いところといえば、登ってみたくなるのが心情。子供と何とかは高いところが好き…。
林道であり、雪で足元も悪いですが、休日の日中なので、この季節でも観光客がまばらながらいらっしゃって、危険な感じはしませんでした。夜に行こうという気にはなりませんでしたが。
さて、丘の上からの眺め。曇天なのが残念ですが、時が止まっているかのように雄大に流れるドナウ、王宮、国会議事堂など街を彩る建造物を一望できる素敵な場所でした。
タバコをふかしてのんびり景色を楽しみ、次に向かうのは、王宮の丘。
王宮の丘から眺めるくさり橋。
王宮。現在は美術館、博物館として使用されています。
「麻沙子は、(中略)城壁に挟まれた階段を昇っていった。(中略)城壁に囲まれたブダ城のドームの、くすんだ緑色が、かつて王宮であったことをしのばせていたが、その下につづく古い建物は城というよりも、博物館とか美術館とかを連想させた。」宮本輝「ドナウの旅人」より抜粋。
王宮の前から眺めるドナウ、そしてPest地区。
漁夫の砦。真ん中に立つ巨像はハンガリー建国の父である聖イシュトヴァーンの像です。
漁夫の砦からの眺めもまた同様に素晴らしいです。少しずつながら、角度を違えて見るブダペストの街並みはどこを切り出しても美しいと感じました。
教会などを見学して、
王宮地下迷宮なる場所に踏み込んでみます。この内部は洞窟のようになっており、いまだに全貌は明らかになっていないそうです。
迷宮を出ると、日も暮れ、「ドナウの真珠」とも讃えられるBudapestの夜景を眺めることができました。
日も暮れて、人気が少なくなりつつありましたので、ケーブルカーで丘を下ります。
Budapest初日の私の印象の代わりに、小説の一節をご紹介させて頂きたいと思います。
「ブダペストはおもしろい街だな。新しいものや古いもの、虚無や希望、哀しみや歓びが、これくらいひとつの絵として人々に見せている街はないよ。どんな国にも興亡の歴史がある。栄光と苦難との、ふたつの傷を消さずに持っているってことが、ブダペストにいると判ってくる。」 宮本輝「ドナウの旅人」より抜粋
by gentlemandinner | 2007-01-27 23:15 | travel