The Last Lecture

帰国して以来、貪るように本を読んでいる。元々読書は好きな方で、どんなに忙しくて帰宅が遅くなってもそのままベッドに倒れこむことは少なかったように思う。

Londonで本屋に入っても、パッと目に入ってくる中で、どれが魅力的な本であるか、残念ながら言語的に一覧性がない。翻って、日本で本屋に入ると、一覧したときに大体どんな本であるかという情報が圧倒的に分かりやすいため、つい欲しい本を手にしてしまう。何度か本屋に立ち寄って5冊、6冊とまとめ買いをすることしばしば。

ジャンルも様々で、法律書はもとより、娯楽的な小説から、関心を持ったお酒に関するもの、心を豊かにする類の本と様々。僕は一冊読んで、次の一冊という読み方でなく、何冊かの本を気分に応じて並行して読むことが多い。そして、気になったことが書かれていたり、心に留まるものがあれば、ページの端を折る。何かのときにふとパラパラめくって眺めてみるためだ。綺麗に線を引っ張ったりすることはしない。

最近読み終えた本の中で、折り目をつけたページが多かったのが、The Last Lectureという本である。2007年9月18日、ピッツバーグのカーネギーメロン大学の講堂で1人の教授が「最後の講義」を行った。同大学教授であったランディ・パウシュによるものだ。彼は授業の1ヵ月前に膵臓癌の転移により余命宣告を受けていた。

この著書はもとより、その授業を収録したDVDは、彼の生き様を鮮明に描き出すものだった。諸先生方には大変申し訳ないが、僕はこれほどimpressiveな講義を聴いたことがない。勿論、余命宣告を受けているという特別な背景による効果もあるのだろうが、これほどにスピーカーの魅力に引き込まれるような授業は味わったことがない。全く悲壮感を感じさせることなく、自らの人生を楽しいと言い切り、まさに今を心から楽しみながらユーモアを交えて語る彼に羨ましいとさえ思えた。その裏でどれだけの涙を流したかは忘れてはならないだろうが。

彼が、どんな夢を抱き、どのようにそれを実現し、実現できなかったものに何を得たか、そして、他人の夢をどう助けてきたか。そんなテーマの中に、色々なヒントがあった。そして、講義が終わりに近づいたあたりの場面に大きな感動もあり、講義は大きな拍手と共に終了する。

様々な言葉が、中には当たり前と思えることであっても、自分の生き方に照らし、確認できたり、発見できたり、こうした素晴らしい人の言葉として受けとめてみると、自分の中に響いてくる。不本意であったに違いないだろうが、彼の人生は、彼以上に長く生きた多くの人よりも幸せに溢れていたのではないだろうか。

僕は折に触れて、彼の講義を聴くだろう。こんな風に生きてみたいものである。


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彼のlectureは下記のwebで視聴できる。
http://download.srv.cs.cmu.edu/~pausch/
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  # by gentlemandinner | 2008-08-22 22:17 | tokyo life

14年。

帰国直前の色々な素敵な思い出もアップしきれていないままに早くも帰国後一月になろうとしている。この間、2年の不在ということもあり、中高大、修習、同業、ロンドンで出会った友人達とランチ、ドリンクと無理矢理予定を詰め込み、加えて職場の挨拶、引越し等々慌しく過ごしてきた。

引っ越した先は、しばらく実家からの通勤地獄に苦しみ、その反動もあって都心に部屋を借りた。それにしても、この日本の便利さはなんだろう。引っ越して一週間ながら、ネットで注文した多くの家具は引越し当日にやってきて、インフラ周りはネットも含めて快適に過ごせる状態になっている。チェルシー戦のためだけに申し込んだと言っても過言でないスカパーも開幕までに何とか間に合う見通しだ。この便利さやサービスは、カスタマーの立場にあるときは有難いことこの上ないものの、多くの方がどんな形にせよ、サービサーの側にいると考えたときに、自分の首を絞めているんじゃないの?というのはよくLondonの日本人コミュで話題に上ったりもするのであるが。

それはさておき、何はともあれ、この便利さは安心感があってよい。加えてLondonのファーニシュトのフラットはそれはそれで便利ではあるが、自分なりのアレンジはそれなりに楽しいものである。

そんな風にバタバタ過ごし、一月経ってなお、「どこで乗り換えるんだっけなー。」と、ぱっと思い浮かばない地下鉄、つい右側に立って顰蹙をかうエスカレータ、降り先の階のボタンを押して、閉めるボタンを押さずに厳しい視線を浴びるエレベータ、女性が待ってくれたりする扉、などなどとまどうことが多い。

そんな中、ようやく慣れてきたものといえば、この蒸し暑さだろうか。Londonを離れるときは、暖かくなってきたとはいえ、手放せなかった上着。暑いのは暑いなりに一日中ハーパン半袖で過ごせるのも気持ち良いと思えるようになり、そして今日出かけた高校サッカー部のOB会。

正直こんなに走ることになるとは思ってもいなかったのだが、御歳60になる当時の顧問から、「◎×ーーー!!!(私の名前)」という怒声が飛んでくると、「いやいや、私も卒業してから14年経っていますから…。」と内心思いつつも、反応して頑張って走らざるを得ない、この感覚が染み付いた体。

そして、体を痛めつけた後の麦酒は何とも言えない味がする。14年経って、皆共に過ごした以上の時間を、それぞれの世界で生きていながら、サッカーをして酒を酌み交わせば、当時に舞い戻る。この不思議な男子校の仲間は何とも言えない居心地の良さがある。
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  # by gentlemandinner | 2008-08-09 21:13 | tokyo life

蚊。

帰国して翌日、早速せねばならない家探し。時差ボケで、紹介してもらっていたにもかかわらず、すっぽかしそうになってしまったエージェントのアポに何とか間に合い、久々に出掛けた東京都心部。

蒸し暑い、凄まじい人混み、圧迫感あって統一性のないビル群に辟易しつつ、多くの物件を連れて回って頂いた。

そして、1日過ごして、足が痒い。蚊に刺された。

この数ヶ月、いまだ記せていないが、ロンドンやヨーロッパで、足を運び、心から素晴らしいと思えたスポーツと藝術の数々のイベント。日本の夏は暑いし、晴れの日が多いし、こうしたものって日本でも成り立たないのかな、と思っていたが、日本の緑の中では蚊取り線香なしにはとても足を運べないであろう。ロンドンでは網戸なんてものはなく、蝿や見たことのない虫が入ってきたりもしたが、蚊にさされるということはなかった。

そうしたことも、いつの間にか当たり前として過ごしてきた2年間。もちろん、ここで偏頗的にどちらが良い、悪いというつもりもないが、こうした"違い"というものは、新鮮な感覚でいるうちでないと、忘れ去ってしまうものでもあるから少し綴っておきたいと思う。

生真面目に整列する駅のホーム、車がいないのに渡る人のいない赤信号の横断歩道、皆こ奇麗にしているが、単色で似通った衣装の乗客、つい右側に立ってしまうエスカレータ、ゴミの散乱していない地下鉄の車内、どこに乗れば乗り換えに便利か表示された地下鉄のホーム、あろうことか置き忘れてしまった財布を自宅まで届けてくださったタクシーの運転手、暑い日差しにかかわらず、サングラスを掛けた人の少ない街中…。

とまあ、色々あるが些細なことである。些細であるが故に、普段気付かないことでもあるのだろうが、当たり前のことが、ちょっと違ったところに行けば、当然のものではなくなる。そうしたことも、初めての海外生活を満喫できたからこそなのだろう。そして、些細であって、すぐに順応していくこともあるが、それ以上に、どうしても慣れていけないだろうし、慣れていく必要もないと思うこともある。

そうしたことは、流されることなく、大切に守っていきたいと思う。
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  # by gentlemandinner | 2008-07-16 23:50 | tokyo life

帰国。

今日、2006年の6月から2年余り生活してきたLondonの街を離れ、帰国します。
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このLondonの雲が厚い空は、疎ましく感じる方も多いようですが、私はこの雲の連なりによって遠近感が強く映し出される景色が好きでした。晴れ間のみえる空がこんなにも清々しい気分にさせてくれることを、30数年生きてきて始めて知ったような気がします。

そして、2年という歳月は、それを前にすれば長いようでいて、過ぎ去ってしまえばとても短く、この期間に起きた様々な事象は、Londonの空のように、一喜一憂させられることの連続でした。今後それをどう生かしていくか、しばらくゆっくり考えることとして、「喜」「憂」共に全て貴重な経験であったと感じています。

これまでも環境の変化に際しては様々な想いを抱いてきましたが、今回もまた色々な感情が行き交いしています。新たな生活への楽しみや、後ろ髪ひかれる想い、様々ありますが、ひとまずは、自分らしく、何事にも正面から向き合って、頑張っていこうと思います。


Londonでお会いし、お付き合い頂いた皆さん、ありがとうございました。皆さんとのお付き合いは今後も続くものと信じています。皆さんの帰国の際、あるいは、再び私が訪れました際に、また美味しい酒を飲みながら、楽しい話を致しましょう。私もそんな話ができますように、試行錯誤しながら頑張っていきたいと思います。

同じく海外留学・研修中の皆さん、東京でこれまでお世話になってきた皆さん、遠方から色々と貴重なアドバイスや励ましを頂き、ありがとうございました。東京で、あるいは海外で再会できますことを楽しみにしております。
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  # by gentlemandinner | 2008-07-14 13:00 | london life

ARENA di VERONA 86° Festival 2008。 in Verona

LondonのRoyal Opera Houseでオペラを見ると、パンフレットに宣伝が載っていて、気になっていたイベントであった。1世紀に建てられたArenaでの野外オペラのフェスティバルである。
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前日の夜はボスの家でのホーム・パーティに呼ばれていたため、帰宅は日付も変わってだいぶ経った頃になり、ろくに睡眠を取らずにやって来た。ホテルでしばらく休んでからランチがてら街に出た。
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日本でのイタリア料理に慣れ過ぎているせいか、これまで現地で食べるイタリアンに、本当に心から美味しい、と思うようなものには出会っていない気がする。それよりも、個人的に好きなのがこの国のワイン。リーズナブルで口に合うものが多いように感じる。このSOAVE Classicoなども、すきっとしていてよい。
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食後、小さなVeronaの旧市街を散策する。街並みを歩いたり、店に入って買物をしてみたり、のんびりと時間を楽しむ。
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それにしても、30度くらいあるだろうか、とても暑い。兎角Londonから来ると応える暑さである。塔の上に登ってみると、この国らしい橙色の瓦屋根と緑が調和した綺麗な街並みを眺めることができる。
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あまりに暑くて日差しが強いので、塔を下りたあとは少しカフェで休憩することにした。そして、この街の一大観光スポットはジュリエットの家。こうして胸に手を当てると、幸せになるんだとか…。
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一旦ホテルに戻って、一番の目的オペラ鑑賞に備える。シャワーを浴びて、着替えて、食事に出掛けると、アリーナの周りには、段々と人が集まり始め、皆、夜のオペラの前に食事を楽しんでいる。まだイベントは始まっていないのに、とても良い雰囲気だ。
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アリーナは1世紀の建造物に赤絨毯が敷かれ、中はカジュアルな中にも適度なお洒落を楽しむ人々で徐々に埋まり始めている。皆こういうイベントの楽しみ方を良く理解しているのだろう。
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今回の演目はGiacomo Puccini作曲のTosca。屋外のアリーナを利用した大胆な演出に圧倒される。
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インターバルにはシャンパンで乾杯したり、雰囲気の良いアリーナを存分に味わうことができた。
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初めは、外なので声の通りとかってどうなんだろう、なんて思ったりもしたが、そんな心配は杞憂。素晴らしい雰囲気に素晴らしい音楽と演出、途中あまりの睡眠不足による睡魔に襲われたりもしたが、本当に来られて良かった、そう思えるイベントだった。
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アリーナ至近にホテルを取った甲斐あって、オペラ後のドリンクを楽しむこともでき、静かに余韻に浸った。
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  # by gentlemandinner | 2008-06-21 23:56 | travel

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