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それでも僕はやってない。

周防監督・脚本の作品である。午前中の風雨が嘘のように止んだので、買い求めたいガイドブックがあってLondon Mitsukoshiの地下に出向いた際、ふと目に留まったDVDがそれであった。以前に、「帰国したら、まあ見てみなさい。」とご示唆頂いた作品だった。ちなみに、書籍、DVDとも、日本のものはLondonでは総じて2倍という高額商品となっており、しばらく手にとって悩んだ末に購入…。

映画作品としての甲乙を論じるつもりもないし、やはり、劇画的要素も見受けられないではなかったが、幾多の裁判ものを描いたドラマや映画の中では、なかなかよく基礎リサーチをされた作品であるように感じた。

法廷の奥に座る司法修習生、表面的に冷静で官僚的側面を否定しきれない裁判官が存在する一方で、事件の実を真摯に見ようとする裁判官がいるという描写、ビジネス弁護士(の描かれたシーンは、懐かしいビルだなーと思っていたら、出向元の受付だった…。これもある種現実に近い部分あり、不満を述べたくなる部分あり…とやや複雑。)と、いわゆる街弁の登場、争点にかかわる細かな裁判官、検察官、弁護人のやりとり、裁判の難しさや苦労を知る弁護士の当番弁護での苦悩とその際のアドバイスのあり方、等々。これまでの作品にない、裁判とその周辺の実像が、かなりの部分よく描かれているように思われた。

裁判にかかわる業務経験は少ないので、感想を述べるにふさわしい立場とも思わないが、裁判、とりわけ事実認定の難しさが比較的繊細に表現されていたように感じる。

裁判というと、裁判所、検察庁、法律事務所等限られた場所で働く者以外の方々にとっては、遠い存在であるというのも無理のない話であり、過去の法曹の不祥事につけ、裁判官の常識からの乖離とか、一般常識の欠如といったことがクローズアップされたりもした。それが真実を突くこともあろうが、必ずしも裁判官のステレオタイプではないというのが私の認識である。エリートとか優秀といった価値基準をどう捉えるかという論点もあろうが、彼等は、一般的な意味において、法曹の中でも、概してエリート層であり、勿論優秀である。司法試験をクリアして、その中で比較的優秀な方がリクルートされ、その資質は疑いないところであるし、修習のクラスの友人や、修習時にお世話になった裁判官を見ても、一般常識や社会性をきちんと備えた方が多い。結局は、どの世界でも同じように、個々人の生き様や本質に依存するところである。

難しいのは、そうしたどこにでもある個性が、個々の事件を、限られた証拠に基づいて、「裁く」ということだろうか。証拠の吟味というものは難しい作業であるし、繊細であると思う。

  by gentlemandinner | 2007-12-02 22:27 | City Life

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